フェルメール 窓辺で水差しを持つ女 牛乳を注ぐ女

窓辺で水差しを持つ女　1662-65　メトロポリタン美術館

フェルメールの記事を上げたやつらがみんなパスした二作品。「水差しを持つ女」と「牛乳を注ぐ女」なのよね。BAUさんの「フェルメール　これって嫌い 　I hate it！」には上がってなかったけど、さっきwankoの記事みたら、これしか残っていないくって、この手の作品は嫌だなんてあった。

まぁ、色気はないよね、華やかさとか。

「真珠の首飾り」が受胎告知の様式をふまえていると話題になったけど、この作品も実は「受胎告知」に見られるものがタイトルにあるよね。

水差しと洗面器。同じ所蔵先にあるR．カンビーンの受胎告知（1425年）に描かれている。メロードの祭壇画の真ん中の「受胎告知」の左奥にケトルがぶら下がっていて、その下に洗面器があり、白いタオル、テーブルの白い百合が純潔を象徴して、「受胎告知」を受けるマリア。

15世紀から「純潔」のシンボルだって。でも、wankoが記事にした嫌いな顔にはなかったけど、この作品は直訳すると「水差しを持つ若い女性」になるから、wankoの記事にアップしてもいいかも。とても若い女性には見えないもん。記事「フェルメール 残念・・・」から。

 

フェルメールの作品にはゴールドの水差しと洗面器に木製かブラス製の宝石箱。赤いベルベットの布地が見えて、青いリボンに真珠のネックレスがのぞいてる。そしていつものとおりライオンヘッドの椅子。

このライオンヘッドの椅子の位置と座り方がおかしいなんていうフェルメールの作品は「赤い帽子の女」だったね。背後の壁には世俗性を持たせるためなのか、地図も描かれているわけなんだ、きっと。

Gerard ter Borch 「身支度を整える女と召使」
メトロポリタン美術館

テル・ボルフの作品は、フェルメールと違って身支度の場面を強調しているけど、召使は水差しと洗面器、そして白いタオルを持ってるね。

女性の身支度の場面は服を身に着けたり、鏡を見たり、トワレ（便器）の使用だったり、いろいろあるけど、テル・ボルフ（Gerard ter Borch）は鏡の女性も作品にしてる。

Gerard ter Borch II 「鏡の前の女」1650
アムステルダム国立美術館 

フェルメールは白い頭巾に民族性の高いドレスを描いていて、どちらも日常の場面を描いているけど、三原色の作品は、いわゆるフェルメールらしい清潔感と世俗性の聖を強調してる。だからフェルメールなんだって。

「窓辺で水差しを持つ女」は、いわゆる女主人の階級。召使や料理女がいるってことよ。「牛乳を注ぐ女」は、その女主人に使える下女中。

牛乳を注ぐ女　1658-59　アムステルダム国立美術館

さて、最後の1枚だ。この壁にかかる籠と金色の容器。これはね、ぜひKAFKA「フェルメールのパレット」をみて。

彼女の記事から①上薬、使用されているカラー、②ポワンティエ、③真鍮と籠、④パンとミルクのカトリック宗教画の説明が載っています。

それで私は、彼女が触れていない足を暖めるウォーマー？のお話。

海外生活が長ければ、骨董屋（アンティーク）をめぐる余裕があると思うんだけど、見たことない？たぶん、これそうだと思うんだ。

小さなストーブと考えてほしいんだけど足元を暖めるものなのね。なんていうものか忘れちゃったけど。ということは、冬、あるいは冬に近い季節をひそかに暗示していると思うのよ。

この作品はほとんど「窓辺で水差しを持つ女」と変わらない三原色を基本に描かれているのに、一方は清潔さを強調して、こちらは労働を強調している。

描かれた女の顔は、現存している作品には描かれていない唯一の労働者の顔。無心に牛乳を注ぐ女の手元、そして光の点描で人の生きる糧のパンは輝き、平蜂や素焼きの鉢は幸せな食卓をイメージできるよね。

世俗性の強い主題を世俗性から切り離したような作品がフェルメール。他の画家の「家事をする女」の作品と比べてみて。

Hendrick Sorgh ヘンドリック・ソルフ　「キッチン」 1643
メトロポリタン美術館
 

Jacob Vrel　ヤーコブ・フレル 炉床の女　1654-62
アムステルダム国立美術館

フェルメールの「牛乳を注ぐ女」を含めて、料理女中（下女中）たちの働き。ヘンドリック・ソルフの描く女中は明るく、フェルメールやヤーコブ・フレルの描いた女中は無心。

こうした下女中と呼ばれる彼女たちの仕事を、フェルメールはとっても聖性のある雰囲気で描いている。KAFKAの記事は、その聖性を宗教と結んだ。間違いじゃあないと私もそう思う。

さてフェルメール記事はこちら　「XAI フェルメールはお好き？」

追記です。2007年の秋冬パリコレで、ルイ・ヴィトンのショーは「モノグラムのバッグをもった若い女－フェルメールへのオマージュ」だったね。こちらの記事から、色の説明もある。

「いろ 色々 ヴィトンのフェルメール カラー」

7パターン以上のマーク・ジェイコブズの作品をあげて、色とフェルメールの作品に関連付けているの、面白い。リンクありがとうございます。kafkaの記事「フェルメールのパレット」を参考にしたとあった。

 

さらに、こちらのブログでは、「真珠の首飾りの女」などで「アーミン柄」っていう存在しない柄についても詳しく説明しているの。sweet ちゃんが、「アーミン柄」じゃないって記事で叫んでいたけど、よかったね。

「アーミンの縁どり　絵画作品から」